私的少女漫画史大風呂敷1970年

このころから次の年にかけてりぼんコミックでは結構色々なタイプの面白い作品が載っていました。ただし当時の少女漫画には珍しいくらいの暗いラストの作品も多かったように思います。

姉妹誌のりぼんでは「スィート・ラーラ」や「5年ひばり組」のような脳天気な明るい作品が多かったのにくらべ、りぼんコミックでは暗い深刻な話や問題提起ものの作品が多く載っていました。演歌歌手をめざす少女の不幸な一生を描いた「しあわせという名の女」(もりたじゅん) では、ラストで愛人の目の前で車に轢かれて死んでしまう少女は最後に「とうとう……」という言い残して息を引き取る。愛人の男の「しあわせという名の女はとうとう……、幸せになれると言いたかったのか、それとも幸せになれなかったと言いたかったのか」という感じのモノローグが非常に心に残った作品でした。「友紀の海を帰して!」(井出ちかえ)は公害糾弾物といっていいと思いますが、当時は環境破壊・公害物がはやりだったのか、他にも美内すずえの「日本列島一万年」や萩尾望都の「かたっぽうのふるぐつ」などもそういう種類の作品でした。レズビアン物の「白い部屋の二人」(山岸涼子、1971年)、近親相姦物の「うみどり」(もりたじゅん。絵がすごく肉感的というか生々しい感じの裸が描かれていて、ストーリーはともかく絵はリアルすぎて好きではなかった)など、今考えたらかなり問題雑誌だったのではないでしょうか。しかしりぼんコミックは1971年に唐突にりぼんに吸収合併されてしまったのでした。

別冊マーガレット(別マ)では美内すずえのSF作品や「赤い女神」「燃える虹」等のスペクタクルロマン物がどんどん面白くなっていました。当時別マは3軒隣の家の子に借りて読んでいたのですが、あまりにも面白かったので「ビクトリアの遺書」(1971年)とか「黄色い海賊船」(1971年)とか頼んで雑誌の切り抜きをもらっていましたあの頃は今と違ってめったにコミックス化しなかったので、面白かった作品は切り抜いて取っておくしかなかったのです。
ひばり鳴く朝」(1971年)は老研究者の実験として赤ん坊の頃から密室の中に閉じ込められ、誰とも接触せず何の教育もほどこされないまま(研究者は別室で餌を与えながら観察しているだけ)育った少女と、研究者の弟子の青年との物語。短編ながら非常に感動的な作品だったので、この月の別マは自分で買った記憶があります。でも友達に「これ、すごく面白かったよ!」といっても「あ、そう」としか反応が返ってこないのが寂しかったです。
美内作品でもオカルト物?(伝奇ミステリー物?)の「13月の悲劇」(1971年)は前後編で掲載されていたため、前編を読み終わったときに続きが気になって気になって、次の号がでるまでの1ヵ月の間モンモンとしていました。それまで随分と漫画を読んでましたが、この時ほど次の号が待ち遠しかった事はありませんでした。

講談社系の雑誌は作家によっては面白い作品があったものの、雑誌としてはそれほど好みではなかったため立ち読みオンリーでしたが、この年の週刊少女フレンド(週フレ)の大和和紀の新連載作品「真由子の日記」は非常にインパクトがありました。絵はイラスト的で白っぽい場面や反対に黒っぽい場面が多く、ストーリーも主人公真由子の、少女から大人になろうとする日常が淡々と描かれ、前半は盛り上がらないといえば盛り上がらないかもしれないものでしたが、(もりたじゅんとは全然別の意味で)リアルといえばリアルな作品でした。作品中出てくる単語「give & take」は親友の少女のセックスと妊娠を暗示している単語でしたが、この単語が友人達の間でも密かにはやりました。

 1970年の作品

注記事項

★ 面白度 or 印象度 or 衝撃度5
● 面白度 or 印象度 or 衝撃度3
○ 面白度 or 印象度 or 衝撃度1
□ 当時人気だった作品、当時の話題作、他
◆ その他の出来事
D デビュー作

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作品名 作者名・掲載誌・掲載年
●どろぼう家族 (青池保子, なかよし, 1970.不明)
★ビアンカ (萩尾望都, 週フレ, 1970.「サインはV」特集号)
●トイレの神様 (河あきら, 別マ, 1970.不明)
●ジュンの結婚 (西谷祥子, 週マ, 1970.No.2/3-No.14)
★美人はいかが? (忠津陽子, 週マ, 1970.不明)
●銀色のデュエット (美内すずえ, 別マ, 1970.01)
●3・2・1・0! (山岸涼子, りぼコミ, 1970.01)
★クールキャット (萩尾望都, なかよし, 1970.02)
●手紙 (ささやななえ, りぼコミ, 1970.03)
●She is he? (河あきら, 別マ, 1970.04)
★詩子とよんでもう一度 (大島弓子, 週マ, 1970.No.16-No.22)
●アストロツイン (竹宮恵子, なかよし, 1970.04-06)
★やけっぱちのマリア (手塚治虫, 週チャン, 1970.4/15-11/16)
●春には青い芽が (山岸涼子, りぼコミ, 1970.04)
●爆発会社 (萩尾望都, 別なか, 1970.虹色のマリ特集号)
★赤い女神 (美内すずえ, 別マ, 1970.05-1970.06)
●クッキーとレモンティ (山岸涼子, りぼコミ, 1970.05)
★うみどり (もりたじゅん, りぼコミ, 1970.06)
★男性失格 (大島弓子, 週マ, 1970.No.27)
★宇宙600年 (西谷祥子, 月セ, 1970.07)
●ひまわり咲いた (山岸涼子, りぼん別付, 1970.07)
★あの虹をとれ! (井出ちかえ, りぼん付録, 1970.08)
●ケーキ・ケーキ・ケーキ (萩尾望都, なかよし別冊付録, 1970.09-10)
★燃える虹 (美内すずえ, 別マ, 1970.09-1970.11)
★狼の条件 (志賀公江, 週マ, 1970.No.39-1971.No.07)
●ラグリマ (山岸涼子, りぼコミ, 1970.09)
★山ゆかば (あすなひろし, 週ジャン, 1970.No.43)
★妹よ (神奈幸子, 週フレ, 1970.No.42-1971.No.09)
★真由子の日記 (大和和紀, 週フレ, 1970.No.43-1971.No.15)
★誕生! (大島弓子, 週マ, 1970.No.51-1971.No.08)
○お元気ですか? (西谷祥子/週セ)
○ねことお姫さま (赤座ひではる/りぼコミ)
○遠い賛美歌 (山岸涼子/りぼコミ)
○わたしはナタリー (もりたじゅん/りぼコミ)
○毒酒あげます (別府ちづ子/りぼコミ)
○ジュリア (一条ゆかり/りぼコミ)
○紅い花 (井出ちかえ/りぼん付録)
○ヘア・プリンセス (高階良子/なかよし)
○キャー!先生 (もりたじゅん/りぼん)
○リリー (まつざきあけみ/週マ)
○モンキー・ロック (美内すずえ/別マ)
◆別冊少女コミック創刊
□アシュラ (ジョージ秋山/週マガ)
□Aから始まる恋のお話 (藤井由美子/週フレ)
□光る風 (山上たつひこ/週マガ)
□ミニのあの子は応援団長 (神奈幸子/週フレ)
□彼女はミセス (藤原栄子/週マ)
□アテンションプリーズ (細川知栄子/週フレ)
□さすらいの太陽 (すずき真弓/週コミ)
□お金ためます (忠津陽子/週マ)
□おれは男だ! (津雲むつみ/週セ)
□ルネの青春 (上原きみこ/週コミ)
□にくいあんちきしょう (弓月光/りぼん)
□恋の1・2作戦 (一条ゆかり/りぼん別付)
□さぼてんとマシュマロ (武田京子/週セ)
□風の中のクレオ (一条ゆかり/りぼん)



































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