映画「ハゲタカ」特別編集版
2010年8月7日にNHK総合テレビで放映された映画「ハゲタカ」特別編集版は、3分弱のドラマ版ダイジェストを加えて2時間14分の本編を1時間48分に短縮して放映されました。大友啓史監督によるコンマ数秒単位のカットと編集が全編に施され、出来る限り原型をとどめた形で視聴者に見てもらいたいという監督の執念すら感じました。まあ映画館でこの映画を32回見た私としては、もしこの特別版を見て「ハゲタカ」のファンになった方がいたとしたら、是非ともフルバージョンをしっかりと見ていただきたいです(無理とは思うけど、できれば映画館で)。
で、どこらへんがどのくらいカットされたのか、今年中にもう少し手直しした物を置く予定ですが、とりあえず暫定版としてブログに書いた記事(2010年8月8日「映画「ハゲタカ」特別編集版、カットされたのはここだ!」)を置いておきます。
映画「ハゲタカ」特別編集版、カットされたのはここだ!
2010年08月08日 (日)
8月7日にNHK総合テレビで放映された映画「ハゲタカ」特別編集版、本来2時間14分の本編が1時間48分に短縮ってなんなのよ、っつーことでやっちゃいましたアンケートですが、皆様ご協力ありがとうございました。昨日はわたくし、mixiのパブリックビューイングイベント(生まれて初めて参加したよ、パブリックビューイングってやつに)にて大騒ぎしながら見ていたので、リアルタイムではそんなにはじっくりと見てませんでした。
でも大胆にこの場面のここをばっさばっさカット、というのではなく各場面を小刻みに切り刻んで数秒ずついただきました〜という感じなのがなんともビミョーでした。特に暗転部分や余韻を感じさせる部分がほとんどカットになっているので物語的に非常にスピーディになったとは感じられますが、余計な事を自らは語らないこの物語の中では、余韻部分で見るものに想像させるところが大きかっただけに、このカットはちと痛い。でもさすが大友さんご直々の編集だけあって、台詞の中抜きや、場面の最後から次の場面の台詞を先にかぶせてくる技などは絶妙。そりゃカットされないにこしたことはないけれど、どうせカットされるなら中途半端にはやってほしくないので、まあ、特別編集版としてはこれはこれでよかったのかも(好きじゃないけど)。
中盤、派遣工問題告発場面前後や派遣工デモ場面は、ちょっと中だるみ的に感じていたので確かに「ギュッと短くして締まったよ」(by 大友D)かもしれん。でも他の場面なんかはカットだけでなく、いつもの場面にいつもとは違う曲がかぶさっているあたりも違和感有り。もちろん慣れの問題もあるけど、劉一華の朝の祈りと鷲津のファンドルーム独りぼっち場面で「朱雀」がかかるのはどうかなあと思う。特にここで「朱雀」がかかると、劉一華の祈りの意味が全く変わって来ちゃうじゃないですか。まあ鷲津と劉一華にともに本格的に戦闘スイッチが入ったっつーことで特別編集版的にはOKかなとも思いますが。
でも他のどこをカットしても、何よりもラストの一本道の鷲津場面の短縮はダメだって、大友さん。ドラマよりも格段に鷲津の心情表現がないこの映画の中では、鷲津が眼鏡をかける、はずすはすんごーーっく、重要な間接的心情表現でもあるし、一番最初のオープニングシーンで聞こえていたのは「風の音」、でも最後の場面で聞こえていたのは「風が鳴る音」、かつて頭を剃った少年が聞いていたあの風の音を、今聞くのは鷲津ただ一人、その彼が「焼け野原」へと一歩踏み出すあの瞬間をああいう風にカットってーーー(泣)。
しかしまあ心配なのは、NHK総合で今後映画「ハゲタカ」を放映する時に、この特別編集版がスタンダードになってしまうことだな。頼んますよ、NHKさん、次はどうかフルで放映してつかあさい。この特別版をまた放映する事になるなら、せめてラストの一本道の鷲津はノーカットでお願いします。
そんな訳で昨日録画しておいた映画「ハゲタカ」特別編集版を改めて見直して、カットされた場面がどこだったのか検証しようと思ったんですが、本当にこまかい数秒単位のカットが多いので、さすがに全部はチェック出来ない、っつーか細かくチェックしてみたものの最初の30分で挫折(とほほ)。まず場面と場面の境目のところが数秒単位でカットがデフォルト(例えばアカマ自動車西安川工場の最初の数秒と最後の劉が歩いて去って行く場面の数秒とか)なんで気が遠くなりそうだよ、ママン……。という訳で、昨日大騒ぎしながら1回見た記憶と、特別編集版を今回2倍速で流し見してみた感想から、もうざっくりいっちゃうよ。他にも気がついたところや間違いがあったら、皆様コメントでタレコミよろしく。多分今月末までにはカット場面一覧として完成することであろう(←丸投げ??)。
「じゃ、行きましょうか」(by 鷲津政彦)
ドラマダイジェスト追加(2分47秒)
ドラマの全くのダイジェストではなく、映画を初めて見る人に、西野治(松田龍平)や三島由香(栗山千明)がなんで出てくるのか、一体芝野(柴田恭兵)と鷲津(大森南朋)がどういう関係だったのかが簡潔によくわかるダイジェストになっていたと思う。しかしこのダイジェストの一番最後に出て来た文章、「あれから4年−ー」にちと笑ってしまいそうになりました。
オープニング
東宝のロゴやハゲタカ製作委員会の部分が短くなっているが、それよりもnepのロゴが出てこない。
東洋テレビ「TOBです!」
「三島さん、これ」とファックスを取り上げる最初の数秒カット、最後の方の「ブルーウォールが会見、14時日本橋、マンダリンオリエンタル東京!」のところ、音声小さめ(笑)
記者会見場
最初の数秒がカットになっているために記者会見場場面の「マンダリンオリエンタル東京/ブルー・ウォール・パートナーズ会見場」のテロップなし。着実に「マンダリンオリエンタル東京」をカットしていってる?(笑)
成田空港、鷲津政彦の帰還
モニタを見る鷲津のアップ場面に飛行機の音が入っていない。
アカマ自動車ウォールーム立上げ
最後の「これからは情報戦となる。一切の情報も外に漏らさないように」カット
アカマ自動車西安川工場
最初の数秒と最後の数秒(劉が歩いて去って行く場面)カット
鷲津政彦の生着替え
一番最初の鷲津のネクタイキュッキュ0.5秒くらいカット
鷲津が部屋移動する瞬間に映るベッドの場面カット
若槻くんの「エクイティ部分が1.5兆円、不採算部門の処理で」カット
三者会談「お引き受け致しましょう」
飯島さんの「口出し料込みの大盤振る舞いや」カット
鷲津ファンドミーティングルーム
エレベータを降りて鷲津ファンドマークの前を通り過ぎるまではそのままだったけど、その後ミーティングルームのドアを開けるまでがカット。やっぱあのマークはカットしないんだね。
中延さんの「添付文書にBOA銀行の預金残高証明しかつけていません」、村田さんの「普通は融資証明をつけるはずだ。何かありますね」カット
アカマ自動車役員会議室
デイブの「ワインスタイン会長も頭を抱えています」カット
村田さんのデューデリ場面
全カット。しかも鷲津ファンドのミーティングルームのドアを開ける所までカットで、代表室のドアを開ける所から始まっている。
鷲津ファンドミーティングルーム
村田さんの「どう出ますか? 鷲津さん」のところで台詞はあるものの村田さんの姿カット
マンダリンナイト
バス停で待つ守山の前に車が止まるまでカット
劉の車がマンダリンオリエンタルというロゴがくっきりな(笑)マンダリンの車寄せ入口から入ってくる場面カット
劉を待ち伏せする鷲津の0.5秒場面カット
「ご一緒に、どうですか」カット(ひゃー、台詞がないから目と目で合図で着席という、ある意味すごい描写かも)。
NYの勉強部屋?の仕事中の劉からフロアにやってきた鷲津とクラリス部分カット
劉がバーでグラスを二つもって階段を下りる場面カット
鷲津の「お前、人を殺した事あるか」の次の劉の「what?」カット
劉の「学歴も、年功序列も、肌の色も関係ない、ただ金を持っているやつだけが物を言える世界」の後の「それが楽しかったんだろ?」をカットして、すぐにかぶせるように鷲津の「……お前は、誰なんだ」につなぐというすっげーカットぶり。
劉一華の朝の祈り、鷲津の黙考
多分短縮した上で、曲が「朱雀」に。ただし曲は一番最初からなので「朱雀」の何かの予兆を感じさせる出だしが、劉の祈りの部分にかぶさってこれはこれで特別編集版的にはいいのかも。ただしこの場面をこの曲にすることで劉の祈りの意味が違って来ちゃうんじゃなかろうか。
アカマ自動車役員会議室
第8回株主応募状況調査、全カット
UAEドバイ 出資依頼場面
「ショコラ」カット
アカマ自動車派遣工問題告発場面
短縮? でもここは大人の事情でカットになるかと思っていたんだけど、ちゃんとのこっているのはすごいことだと思います。民放ではありえないかも。
劉一華インタビュー場面
三島由香の「どうして私を?」の後の柴崎の「さあな。車出して」の後の台詞、「とにかくうちの調査でも劉の好感度はすごい。CLICがバックにいるとわかっても人気は落ちていない。彼のパーソナルに数字があるって上の判断だな」からマンダリンのインタビュールームに入る直前までカット
派遣工デモ場面
「映画「ハゲタカ」特別編集版、カットされるのはどこだ!?」アンケートでも第1位だった場面。短縮されているのだと思うが、この場面にはまったく愛着がないので微妙な違いはよくわからない。三島由香の「とにかく話を聞かせて下さい」の後の派遣工たちのマスコミへの怒号がさっくりカット。
鷲津ファンド代表室
村田さんが渡した資料を見る鷲津場面、資料の中に死亡戸籍票がない
ウォールーム
一番最初のドアが開く場面カット
メンバーの「中国の事業所では、これがCLICが描いたアカマ買収後の青写真という見方をしています」「BWPの発表した内容と真逆じゃないか!」カット
西乃屋
鷲津が車を降りてからの「久しぶりだな」カット(ここも目と目で合図か?(笑)
西野治の「それにしてもどこに行っても禁煙、禁煙だ。うち旅館も全館禁煙ですからね、安心して煙草を吸えるのはここぐらいなもんだ」カット
劉「拾え、拾うんだ、守山」
短縮。ここは眼鏡をかけてない劉が床に座っている場面と椅子に座っている場面があるが、床に座っている場面がカット
東洋テレビ
ビデオテープ再生場面カット
BWP・スタンリー提携
短縮
鷲津ファンドの鷲津席の芝野場面
「読み終わりましたか」カット
デューデリ中の村田さんが帽子をかぶる場面カット
東洋テレビ
柴崎の「中国の時代、ってことですかね」の後の野中さんの「ああ、そうかもしれんが」カット
守山 at 株価ボード前
「映画「ハゲタカ」特別編集版、カットされるのはどこだ!?」アンケート第4位、当然全カット。守山には興味がないので(←ヒドイ)カットされるならここだろうとは思ってたが、でもここをカットすると「ハゲタカの雛」としての守山描写がなくなるってことなんだよな。
劉一華体育座り
短縮。ここは劉が鷲津から「お前の故郷を調べた」「お前は誰なんだ」と言われた事で、自分のアイデンティティに苦悩する重要な場面なんだけどなあ。「アイデンティティに苦悩」なんていう手垢の付いたありきたりな言葉で言っちゃうとなんだけど、本当の所はいっぱいいっぱいだった劉が、鷲津の「お前は誰なんだ」(「俺はお前を知っている」「今のお前は何者だ?」「お前が真実やりたい事がこれなのか?」)という言葉で決壊し、ここでぐるんぐるんになって考えに考えたからこそ鷲津にアカマを託す決意に至る訳だし。
株価暴落場面
古谷社長の「芝野さん、これはただ事じゃない」カット
短縮っつーか、株価グラフに心臓の音が重なっていないってなんで!? なんでそれを取っちゃうの?
古谷社長への最後通告場面
鷲津の「あなたがやったことは結局スタンリーに何十億円も手数料でもうけさせただけだ」の後の「効率化、効率化のあなたのかけ声のもと、現場では人件費を切り詰め、1円単位のコスト削減を地道に積み上げている。だが結局、そのすべてをあなたがゴミ箱に捨てたような物だ」カット
飯島さんの「見苦しいな、古谷くん。後継者は私が責任を持って面倒見る。まずは、あんたの進退をはっきりさせんとな」、鷲津の「後はよろしくお願いします」、涙目の古谷社長カット
鷲津が席を立って出てゆく音カット(ここは去ってゆく鷲津の姿を映さずに音だけが響く所がミソなんだけど)
常盤橋公園の劉
短縮?
鷲津ファンドミーティングルーム
若槻くんの「お手元の資料をご覧下さい」の後の「アカマの業績不振の原因ですが顧客志向性の不足……」カット
アカマ自動車臨時取締役会
短縮
アカマ自動車本社ロビー
受付場面カット
芝野が「おまえらしい」と言った後の鷲津の微妙な表情、および「じゃ失礼します」と鷲津が去ってゆく場面、その後の劉のレポート画面カット
NewアカマGTの守山
「映画「ハゲタカ」特別編集版、カットされるのはどこだ!?」アンケート第5位、もちろん全カット。しつこいようだが守山にはなんの興味もない私だが、でもワンランクレベルが上がった守山の目の前に大きく広がった空の場面と、かつてドラマで鷲津が降り立った場所(泉ガーデンタワー)に向かうあの赤い車というのもすっごく重要だとは思うけどね。
中国湖南省奥地の鷲津
劉の生家場面短縮。しかし横分け(中国人現地ガイド)と鷲津の場面に「飛べない鳥」(だったっけな?)の曲がかぶさるのには非常に違和感っつーか、曲が邪魔。
一本道の鷲津
眼鏡をはずしてじっと道を見る鷲津場面超短縮。いや、ちょっと、ここ、この眼鏡をしてない鷲津は超重要なのに、ほんの一瞬って何!? そして眼鏡をかけた後たたずむ後ろ姿短縮って、おいっ! さらに曲がかかっているせいか「風の鳴る音」がないって!? いやもう、ここでクレジットが出るのが思いのほかダメージ大。
エンディングロールカット
「映画「ハゲタカ」特別編集版、カットされるのはどこだ!?」アンケート第2位、当然想定の範囲ってやつでしたが……一本道の鷲津のシーンにメインキャストのみ表示で、5分ある黒画面のエンディングと曲は全カット。ここのカットはもう仕方がないことだけど(何せここで5分もかせげるしさ)、でもここは「再生」のテーマ「His Wings」と反撃のテーマ「拿羽」がかかることに意義があるんだよう(泣)。
まあ本来は2時間14分の長さの本編を、ダイジェスト込みでこの内容で1時間48分に収めたのはすごいと思います。大友監督グッジョブ。でも、まあ、私はお口直しにDVDの方を見直しますけどね。