TV大好き Vol.1 涙ぐましい努力

2002/2/9

遠い目をしてみる

年寄りの愚痴になっしまいますが、今はいいですね。気に入った番組があればすぐに録画できるし、情報誌は沢山出ているし(私もThe Televishon を定期購読しています)、Webpage を見てみればファンや関係者の方が作った Homepage が山ほどありますから。その点、昔はねぇ……(遠い目)。

第一段階

気にいった番組があれば何とか残しておきたい!

遥かな大昔、放送局でもリッチなご家庭でもないうちでできることは、まずオーディオテープによる録音でした。でも何せ子どもなもんで(ただ単に馬鹿だから?)、ジャンル別に分けて録音するとか録音時のデータをちゃんと残すという事をしない。とりあえずTVと書いてあるテープを再生してみると、歌番組もドラマも自分のお誕生会もみんないっしょくたに入っている。

おまけにTV本体とカセットデッキ本体をオーディオコードで繋いで録音するという技を習得するのはもう少し後なので、周囲の雑音てんこもり。録音する時は家族に「これから録音するから静かにしててね!」と頼んでたものです。

第二段階

それでもう少し大きくなると少し整理してテープを分けて録音しようと考えるんですが、すでに録音済のテープもなんとか整理したい。で、どうするかというと(何せ馬鹿だから)いきなりテープを切ってセロテープで貼り合わせちゃう。それでうまく再生できるかっつーと、貼り合わせたテープのところがひっかかってほとんどダメ。こうしてどうしても残したかったテープが完全に再起不能となっていました(でもやったのは1回だけよ。で、再起不能にした番組テープは「続タイム・トラベラー」)。

あ、そういえば。話はちょっとズレますが、ものすごーーーーく気に入ったドラマの最終回を録音した小学生の妹は、何かのはずみで最初の数秒、録音した部分を消してしまったことがあります。それでどうしたか、というと。

その最初の部分には、登場人物達の「お〜い」という呼びかけ声が入り、それからテーマ曲が入り、CM、ドラマ本編が入っていたのですが、自分が消した「お〜い」という呼びかけ声が入るところに、自分の声で「お〜い」と言ってテープに上書きしていました。

これが今同じことをするなら(絶対しないだろうけど)、せめて消した部分の秒数を計ってから録音するんでしょうけど、何せ馬鹿な私の妹だからやっぱり馬鹿で、新たに録音し直した部分がちょっとだけ長くって、今度はテーマ曲の部分まで消してしまったのです。とほほですね。

第三段階

さてもう少しだけ賢くなったので、次に編集する時はやはりダビングをします。でも基本的にやっぱり馬鹿なので、二台のカセットデッキをオーディオコードで繋げばいいものを、オリジナルのテープを再生している横で別のカセットデッキの新しいテープを回します。もちろん周囲の雑音はてんこもりですが、それでもテーマやジャンル別に分けたテープ集を作った嬉しさからか、あまり気にしません。

第四段階

さすがに高校生くらいになるとそこまで馬鹿なことはしませんが、何せまだビデオデッキがそれほど普及してませんから(同級生でも持っていたのは医者の御令嬢だけでした)、相変わらず録音です。でもなんとか映像も残したい。そこでTV画面の写真撮影です。これは結構イケました。ま、たまに横縞というか横に黒い線が入ったりしましたが。

でも写真だってフィルムや現像代が馬鹿にならないからそんなには枚数は写せません。そうするとやっぱりどんな感じの映像だったのかとにかく残しておきたい!と思う一心からか次にしたのは、必死になってメモをとる、という実に原始的な方法でした。

これは「科学忍者隊ガッチャマン」の時に10回分くらいやったのですが、思ったよりもかなり映像イメージを想起させるものでした。でも今メモを見ると、当時の必死になってメモをとった状況も思い起こされて、なんて涙ぐましい努力を、と思ってしまうんですね。

ちなみに、同じく「ガッチャマン」のファンだったクラスメイトは、私から借りたテープをダビングした時に、私が書いたメモ(レポート用紙1〜2枚前後)もやっぱり自分の手で書き写していました。なぜならこの時代、コピー機も今ほど普及していなかったからです。

第五段階

さて、ビデオデッキがもう少し普及すると、自分は持ってないまでも、医者でも政治家でも弁護士でもパチンコ屋でもない友人の家にビデオデッキがあったりします(ちなみに一番頼みやすかったのはサークルの後輩で電気屋の後取り息子だったヤツ。まだ少し高価だったビデオテープを惜しげもなく湯水のように消費していた)。そこで自分はビデオデッキを持っていなくても、いつか買った時のために、気に入った番組があれば頼んで録画してもらいます。

でも、番組によってはちょっと頼みづらい、というか一瞬躊躇してしまう番組もあり、「へぇー、桐谷さんそういう番組見るんだー」と言われたくないがために涙を飲んであきらめた番組もありました(どの番組の録画を頼もうと思ったのか、今になると全く思い出せませんが、まあ、思い出せなくても全然かまわない番組だったんでしょう、きっと)。

第六段階

していよいよビデオデッキの自力購入です。この段階で「涙ぐましい」と後になって思うのは、やはりビデオデッキの選択です。いや、これは涙ぐましいんじゃなくて、悔し涙にくれるっつーやつでしょうか。

そう、私が始めて、自力で(自分の給料で!!)買ったビデオデッキはベータでした。このころはまだVHSとベータは互格だったのに。あんなことになろうとは(号泣)。
でも当時のマニアや私のような中途半端な凝り性はみーーーーーーんなベータを買ってたのさー(←開きなおり)。やっぱり当時は画質の良さとかテープのコンパクトさとか使い勝手の良さとかでいうとベータの方が格段に上だったしね、ふぅ……(遠い目)。

まあそれはともかく。

マイビデオデッキでマニアがやることは皆同じです。録画TV番組のCM抜きです。まあ、いまさら言うまでもないことですが、一番楽なのは最初は全部CMも番組も全部いっしょくたに撮って、それをCMを抜きながら別のテープにダビングすることですが、何せこの時代、まだデジタルデッキじゃないですから、ダビングした複写テープは、オリジナルテープに比べると僅かにでも確実に画質が落ちるわけです。

そうすると画質を落さずにCM抜きをするとなると、オリジナルを録画中にいちいちポーズボタンを押してCM抜きをするんですが……。

まあ、これも今更言うまでもないことですが、結構タイミングが難しい上に、ハタから見ていると何でそこまでしてCM抜きをするの?と思うし、時間が経ってからテープを再生してみると、当時のCMが入っている方が面白かったりするんですよね。

さて、そうして苦労して録画したテープをどうするか。
実は何度も再生して見るとやっぱり確実に画質が落ちてきます。だからめったに見ることができない。しかもただ放っておくのももちろんいけない。1年に1回はテープのために巻き戻しをしなくちゃいけないし、保管するのも湿度や温度、ほこりや近くに磁性物質がないか確認しなくちゃならないし、と、無駄に手間がかかります。

第7段階

まあ、そこまで凝らないまでも、ほら、勉強する時も参考書を買うともう安心しちゃって、いつでも見られると思って全然開かなくなるというのがありますね、あれと同じで、一度録画しちゃうとなかなか見ない。いつでも見られるんだし。ちょっと今忙しいし。

そして一旦録画したけどまだ再生して見てないドラマとかの続編とかPartなんぼとかが放映されると、最初のやつは録画しちゃったし、もし最初のやつを後から見てやっぱり続編も録画しておけば良かった、と思うと悔しいからとにかく録画する。

それでその録画した続編とかPartなんぼのテープを見るかというと、まず最初のやつを見てからでないと、もしかして最初の作品のネタバラシが入ってたりしたらこれまた悔しいし、人物設定とかもわかんなかったりするといやだから、とにかく最初のやつを見てから、続編だのPartなんぼを見ようと思う。

でも時期を逃すと一度録画したテープというのはなかなか見ないんですね。こうして見なくちゃいけないのにまだ見てないテープと、見ておかなきゃならないテープを見てからでないと見られないのでまだ見てないテープの山が増え続けます。

いやー、ハタから見ていると本当に馬鹿ですね。

最終段階

そうこうするうちに、録画していつでも見ることができると思うから今一つ番組も真剣に見ないことに気がつく(別にそこまで真剣になる必要はないのだが)。

だから。もう録画なんかしない。ここで見逃したらもう見られない。真剣勝負です(一体何との勝負なんだ?)。番組表やTV情報誌でチェックして見たいと思った番組があれば、ひたすらリアルタイムで見る。

見たい番組が同じ時間帯に2つ以上あれば、どちらがより真剣に見たい番組か情報を検討して、どちらか片方だけ見る。もう片方の番組は思い切ってあきらめる。

もちろん、見たい番組があるのに会社で残業になったりしたら、とにかく間に合うように走って帰る。放映時間に間に合わなそうなら、よっっっっっっぽどの仕事でない限り、切り上げて(あるいは投げ出して)とにかく走って帰る。重要な会議の最中だって、強引に議事を進行して会議を終らせたり、あるいは「実は子どもが急病で」と仮病を使って抜け出す。

そして走る。電車の中でも(もちろんあの、中央線)、今日だけは架線事故も人身事故も起こってくれるなと祈りつつ。

こうして涙ぐましい努力は今でも続いているのです。

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