3冊の「地球最後の日」

2002年2月27日

「地球最後の日」とは?

「地球最後の日」というSFは映画にもなったことがある結構有名なSFで(「地球最後の日」1951年、監督ジョージ・パル)、原書初版が60年以上大昔の作品だったのにもかかわらず、原作の一部が再映画化されたせいか(「ディープ・インパクト」1998年、監督ミミ・レダー)1998年には新訳で創元SF文庫から文庫本が出た(382p、680円)。一体今時こんな本を私以外の誰が読むんだ? と思っていたが、どうやら他にも読者はいたらしく、fj.rec.sf などでは思いの他好評だったようだ。

 原題は「世界が衝突する時」("When Worlds Collide" by Philip Wylie and Edwin Balmer, 1932,1933)。その原題通り地球に太陽系外からやってきた放浪惑星が衝突して地球が粉々になってしまうが、有志の科学者が何とか助け合って脱出するためのロケットを建造し生きのびるというお話。これには続編もあって、タイトルは「世界が衝突した後」(もう少しタイトルを工夫すりゃあいいものを)。

 その新訳の文庫本の方は、内容は60年以上前に出たにしてはあまり古さを感じさせず、小学校時代に思いきりハマった3冊の「地球さいごの日」を思い出して、続編も文庫本で出ないかなーと待ち詫びる今日この頃だ(多分絶対出ないだろう)。

「地球最後の日」がいっぱい。

その3冊とは別々の版元から出た以下の3種類の本。

「少年少女世界科学名作全集」講談社(青っぽいカバーのやつ)
「地球さいごの日」ワイリー
「ジュニア版/世界のSF」集英社
「地球さいごの日」ワイリー
「SF科学小説名作シリーズ」偕成社(裏表紙が赤いやつ)
「地球爆発」ワイリー&パルマー

 これが原作が同じなのに、内容はどれもかなり違っているのである。あまりにも違うので最初は同じネタ本だとは気がつかなかったくらいである。

 一応、ざっとストーリーを解説すると(文庫本記載のあらすじだけど)。

南アフリカからの特別便が、今夜、全世界を震撼させる天体観測記録を運んできた −−ここ数ヶ月、その動向が注目されてた二惑星は、日ごとに地球に迫りつつあり、衝突はもはや決定的との結論が下る。ブロンソン天体と命名された放浪惑星は、二年後、巨大なアルファがまず月を砕き、やがて地球をも粉砕する一方で、小さなベータは第二の地球になりうる、救いの星だという。世界有数の科学者、ヘンドロン博士は、このベータに降り立つべく、秘密裏に宇宙船建造を計画。惑星接近にともなう天変地異で人類の大半が死に絶えるなか、脱出を決行する。ジョージ・パル、S・スピルバーグと二度にわたり映画化された古典破滅SF映画の傑作!

うーん……。でもジョージ・パル版はともかく、「DEEP IMPACT」の方は期待していただけに、かなりがっかりした映画だった。もっともっと徹底的に破壊し尽くす様を描いてくれたらよかったのにというのもあるが、他のSF作品(「神の鉄槌」アーサー・C・クラーク)との合体原案だったために、まあ、あれでは「地球最後の日」とは言えないというのが一番大きな失望点かもしれない。なにせ結局は地球最後の日じゃないし。

「地球さいごの日」講談社版

 訳は福島正実。大元のストーリーは変わっていないものの、かなり子ども向けにアレンジされている。まず主人公が子どもで、原作ではパイロット役のデビッドがブロンソン教授の息子という設定で主人公になっている。原作では主人公のトニー(ヘンドロン博士の娘イブの婚約者)もイブももちろん子ども。子どもだけれど、地球脱出計画の仲間にはいっていていろいろ活躍しちゃうのである。
 一番最初に読んだ「地球さいごの日」なのでひと際愛着があるが、でもこんなに改変しなくても、原作をそのままちょっとだけジュニア向けにアレンジしても別に違和感はないはずだと思われる(現に、集英社版はかなり原作に忠実な訳)。

「少年少女世界科学名作全集」講談社(青っぽいカバーのやつ)


「地球さいごの日」集英社版

内容的にはこの本が一番原作に忠実。そのせいか講談社版よりも世界最大の大災害描写に臨場感があったように思われる。でも表紙カバーのイラストが地球衝突の場面を描いているものの、このつぶれかけの物体は何? という感じ……。

「ジュニア版/世界のSF」集英社

「地球爆発」偕成社版

 これは結構原作に忠実だが、後半部分に原作の続編(「世界が衝突した後」)も入っている。続編では、地球の軌道にスッポリ収まったベータには、実は人が住んでいたという話。
 この偕成社版のSFシリーズは最初理由もなく嫌いだったシリーズだったので、結局一番最後に読んだ「地球さいごの日」になった。ストーリーが2話分押し込めてあるせいか、キャラクター描写が一番弱かったように思われる。今回ちらっと読み返してみたら、ベータに移り住んだ人たちの中に日本人スパイがいたというエピソードもあってびっくり。原作でもあるのかなあ、この話。
 もし可能なら創元SF文庫で続編の新訳を出して欲しいと思う。もし日本語版が無理なら、なんとか英語版のペーパーバックでいいから読んでみたいと思う(英語能力中学生以下だけど)。

「SF科学小説名作シリーズ」偕成社(裏表紙が赤いやつ)

「地球爆発」偕成社版

これが1998年に出た新訳版の「地球最後の日」

東京創元社、1998年

"When Worlds Collide"

こちらは英語版のペーパーバック。30年以上前に新宿の紀伊国屋書店で購入した代物。それ以来、続編の本も探しているが見つからない。

"When Worlds Collide", Philip Wylie and Edwin Balmer,Sphere Books Limited,1932,1933

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